須賀川特撮アーカイブセンター(2020年11月3日開館)に、ATACメンバーが寄せたコメントをご紹介します。
(これらのコメントは、須賀川市内で配布している特撮アーカイブセンターのリーフレットに掲載しています)

【庵野秀明 監督・プロデューサー/ATAC理事長】
2009年9月に特撮資料のアーカイブを思い立ってから、11年。
2012年7月に特撮作品への恩返しになればと「館長 庵野秀明 特撮博物館」を開催してから、8年。
2015年2月に須賀川市から賛同のお話を頂き、設立準備を始めてから、5年。
2017年6月に特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)を設立してから、3年。

そして2020年11月に須賀川特撮アーカイブセンターが開館します。

須賀川市の御尽力のお陰でついに積年の願いが叶い、恒久的な特撮資料の保存と啓蒙事業への第1歩を踏み出せます。これに留まらず、須賀川市やファンの皆様のお力添えによりこの先2歩、3歩と未来に歩み続けて行きたいと思います。
どうぞ、よろしくお願い致します。

【氷川竜介 明治大学大学院特任教授/ATAC副理事長】
私は明治大学で大学生・大学院生向けに「特撮の歴史と技術」の講義をしています。専門学校ではないので、文化芸術的な側面に歴史を絡めつつ、トリック撮影と呼ばれた虚実逆転のマインド、円谷英二特技監督の伝えてきた「イマジネーションを現実化する発想」や不屈の職人魂は、若い方々の未来のために必要だからです。そして「研究」の側面では、いかに「一次資料」が大事かを強調しています。ミニチュア類や各種資料もかつては産業廃棄物でしたが、世代を越えた文化となった以上、学術的なエビデンスの早期保全は急務です。そんな願いに応えるように、特撮の重要な文化財が円谷英二監督の故郷で保管され、公開されることを喜ばしく思っています。特撮映像は観ても楽しいが、自分でも作ってみたり、分析研究したりも楽しい。そんな発展的な場となることを願っています。

【樋口真嗣 監督・特技監督/ATAC副理事長】
子供の頃、夢中になった番組や映画。
その舞台裏を紹介した記事を見て驚き、
番組や映画を観るよりも興奮しました。
この物語は、この映像は、誰かが作っているのです。
驚くようなアイディアで、
想像もつかないほど優れた技術で、
気が遠くなるような時間をかけて、
誰かが作っているのです。
それがカメラで写されて一本のフィルムになって映画や番組として出来上がり、
そのためだけに作られたものは役割を終えますーー。

その残ったかけらの一つ一つを集めてきました。
小さいものもあれば、大きなものもあります。
置く場所がなくなって捨てられたりしそうになったものを助け出したりもしました。
壊れてバラバラになっていたものを元どおりに直しました。

そして今、わたしたちの憧れであり、道を切り拓いた大先輩の生まれ故郷に
保存のための施設を作っていただきました。

仕事でもしないと、いや、今や仕事をしても目に触れることのできない、
驚きに満ちた、夢のかけらのかずかずを、未来永劫、伝えてください。

【尾上克郎 特撮監督(特撮研究所)/ATAC】
開館おめでとうございます。感無量です。須賀川市様のご英断とご支援に感謝と敬意の言葉しかありません。ある日「特撮が無くなるかも」という現実を知りました。その時の庵野秀明の呟きを忘れることが出来ません。「世の流れに抗ってでもなんとか伝え残せないものか」。それは特撮を生業とする我々の使命であり円谷英二監督や先達への恩返しであると思えました。これに手を差し伸べて下さったのが須賀川。円谷監督のご生地であるこの土地がこの上もなくふさわしいと感じました。仲間を募り、福島県様や森ビル様はじめ多くの方々のご助力を得ながらの須賀川との長い二人三脚が始まり、「この地に特撮の正倉院を」という夢は現実となりました。しかし道は半ば、やるべきことは山積みで終わりはなく、この日を始まりの日と心を新たにしています。市民の皆様のご理解なくしてこの宝を残し伝えていくことは困難です。どうぞここを愛し守って下さる事を切に願います。そして特撮を応援して下さる全ての皆様、どうか末永いご支援を心からお願い申し上げます。

【原口智生 東京芸術大学大学院映像研究科非常勤講師/ATAC修復師】
昭和41年、TV映画「ウルトラマン」放映。6歳だった僕は「特撮」という興奮と魅力の洗礼を受け、そして幸運なことに親族の計らいで、その「特撮」が創り出される現場に足繁く遊びに行くことが出来たのです。驚くことに、そこで撮影後役目を終えたミニチュアや造型物が廃棄される光景に出会い、更に幸運なことにその一部を頂くことが出来たのです。この「特撮」のための部品たちには作り手の創意と工夫と秘密の跡が残されていました。これらは後世のためにも絶対残さなければいけない! 日本特撮の研究を推し進められた故・竹内博氏、貴重希少な特撮資料の収集に尽力されている福島県在住の西村祐次氏、そして「特撮」を愛するすべての人々の想いが、ここ須賀川の地に「特撮」の正倉院を誕生させることになったのだと思います。円谷英二特技監督の生地から日本特撮の歴史の保存と新たな「特撮」の創造の礎が始まったことを喜びたいと思います。

【西村祐次 M1号代表取締役/ATAC】
私の地元にこのようなセンターができるなんて思ってもいなかった。家から30分くらいの所に…。
須賀川市内には円谷英二ミュージアムもできて市内には怪獣がいっぱい!
そして特撮アーカイブセンター。まさに夢のようなエリアが近くにある。
特撮の小道具は優秀なデザイナー、造型した人達の努力の産物なのに撮影が終わると置き場所等のことから捨てられたり壊されたりするのをよく目にしてきた。その隙間で色々手に入るものは手に入れてきた。運良く手に入るものは頑張って集めてきた。どんなに壊れていても撮影で使用されたものには思い出と輝きがある。それらが修復され保存される。そして再びフィルムを通してではなく、直接目の前で見る事が出来るのだ。なんて夢みたいな事がおきているのだろう。感謝しかない、本当にありがとうございます。微弱でも協力できたことを嬉しく思う。

【三池敏夫 特撮デザイナー(特撮研究所)/ATAC】

〈参考サイト〉
須賀川市公式ホームページの須賀川特撮アーカイブセンターのページ
https://www.city.sukagawa.fukushima.jp/bunka_sports/bunka_geijyutsu/1006499/index.html